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2012年4月23日 (月)

ヘッセの『車輪の下』

ブータン国王ご夫妻の来日以来、GNHという言葉が話題になることが多い。GNH( Gross National Happiness)とは、国民総幸福量のこと。GDPが金銭的・物質的な豊かさを指す言葉なのに対して、精神的な豊かさを指すという。

健康で文化的な生活のために物質的豊かさは必要だが、それは、物欲の満足とは別のものだろう。私自身、これまでで一番幸福だったのは、カビの生えた官舎に住み、3歳の子どもを近くの公園で遊ばせていたときだった。あるいは、エアコンのない四畳半の下宿で、夜中、勉強の合間にシェークスピアを読んでいたときだったかもしれない。

中学2年になったばかりのころ、新潮文庫でヘッセの『車輪の下』(高橋健二訳)を読んだ。一冊100円だったかと思う。この100円で学んだことは、その後、少なくない学費を払って学んだことにくらべても、決して小さくはないことだった。

これまで、単著だけで18冊本を書いた。死ぬまでにあと何冊か書くと思う。コンピュータの教科書や入門書、歌集や歌の評論集、もう少し一般的な本。特に折口信夫についての本は、(半分は)理系人間の自分が書かなければならないのではないか。そんなことも思っている。

その上で願う。あのときめぐりあった100円の『車輪の下』のようなものを、できれば私も書いてみたい。GDPにはそれほど役に立たず、GNHにはとても大切な本を。

坂井修一

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