映画・テレビ

2013年9月29日 (日)

1000万マイル

歌を作っていて疲れたので、「マイレージ・マイライフ」という昔の映画をDVDで観た。

ジョージ・クルーニー演じる主人公は、首切り代行業。つまり、社長の代わりに社員にクビを言い渡す仕事をしている。米国全土の会社をかけ回ってこれをやるから、当然、飛行機のマイレージはたまる。映画は、アメリカン航空とヒルトンホテルがスポンサーだったようで、これらを使うシーンがてんこ盛りであった。

最後のほうで、主人公は、1000万マイルをためて、機内アナウンスされ、機長の特別な歓迎を受ける。航空会社への電話も個人の専用回線となり、空港もホテルも、すべての列をパスして特別待遇でチェックインできるようになり、専用のラウンジを使える。

1000万マイル! これが実マイルであれば、恐ろしい数字だ。赤道の周りで地球一周しても、2.5万マイルにしかならない。私はこれまでの最高で、一年に5万マイル飛んだことがあるが、この年は、7回海外出張をした。それでも1000万マイルためるには、200年かかる。

アメリカン航空でも、この記録をもつ人は、(主人公をあわせて)7人しかいないという。これは本当なのだろう。人生の大半を空で過ごす人たち。放射線を浴びるのも半端ではないだろうし、気流の乱れやエンジンの不調、ミスコネクトや欠航など、いろいろな目にあっていることだろう。

マイルがたまるほど人間のチープ感は高まる。苦笑いしながらそれに耐えられるかどうかかが分かれ目だ。

(坂井)

2013年8月25日 (日)

『スタートレック イントゥ・ダークネス』

昨日、『スタートレック イントゥ・ダークネス』を3Dで観ました。オリジナルを踏襲しながら、21世紀の”不安な色彩”で世界を再構築した優れた作品でした。悪役のカンバーバッチは、シャーロック・ホームズの役で有名な人ですが、格闘シーンだけでなく、静かに話をするシーンに魅力があり、危険な思想家としての面をもっと描いても良かったかもしれません。

スタトレは、いわゆる勧善懲悪ではなく、無数の価値観を調和・並立させることで人類の未来を構築していくというのが原作者ロッデンベリーの思想(オプティミズム)でした。新しいシリーズは若い時代のカーク船長が主役で、思索的な面よりも情熱的な面が強調されているようですね。

『スタートレック」 は、"The Cage"以来、映画・テレビ含めて715エピソードのすべてを観ているので、一応私もトレッキーの端くれと思いますが、いわゆるマニアの方々から観ればまだまだです。スタトレのクイズでも、私は60点ぐらいしか取れません。

(坂井)

2013年4月14日 (日)

キャサリン・ヘプバーン

このブログでも、いくつかの雑誌でも、書いたり言ったりしましたが、私が一番好きな女優は、キャサリン・ヘプバーンです。

といっても、私が観た映画は、『アフリカの女王』『旅情』『招かれざる客』『冬のライオン』『黄昏』の5作品だけで、彼女が出たものの1割強に過ぎません。この大女優の魅力を語る資格などもとよりありはしないのです。しかし、この5作だけでも、キャサリンの演技は心にしみ通ってきました。あの独特の声の響きにも、喜怒哀楽の顔の変化にも、全面的に共感を覚え、その共感を持ち続けています。

自分の後半生の楽しみはいくつかあります。エルミタージュとプラドに行くこと。『アンナ・カレーニナ』と『ユリシーズ』と『死霊』を読むこと。森鴎外、与謝野寛、木下杢太郎、釈迢空の本を書き、何冊か歌集を出すこと。それらに加えて、まだ観ていないキャサリンの40本の映画を観ることがあります。

「スタートレック」全作品を観ることもありましたが、数年前に果たしてしまいました。たしか714本あったと思います。これに比べると、キャサリンの40本は軽いのですが、彼女には安易に触れたくない気持ちがあります。きっと時間がかかることでしょう。

(坂井)

2013年3月31日 (日)

「アーティスト」(と賞)

夕べ、2011年のアカデミー作品賞「アーティスト」を観た。近くのGEOで50円!でレンタルしていたのである。

サイレントだからできる工夫(BANG!の意外性など)や、タップダンスの伏線の敷きかたなど、お見事だった。そのほかも、たいへんおしゃれで凝った映画で、楽しめた。アカデミー主演賞のジャン・デュジャルダンの表情の変化もなかなか良い。

すでに書いたが、この年に上映された「ヒューゴの不思議な発明」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」「ミッドナイト・イン・パリ」を飛行機の中などで観て、どれも感心していた。それぞれに笑いあり、涙あり、苦みありで、しかもとても上品だ。

どれか1つを選べ、と言われれば、私ならば、「ものすごくうるさくて」を選ぶだろう。同時多発テロから立ち上がっていく少年と周囲の人々の思いを描いた傑作だ。

  • 賞というものは、同じ土俵で同じ技を競うものではない。映画だけではなく、ノーベル賞でも、学会の論文賞でも、短歌の新人賞でも、同じことだ。候補作をくらべて、優劣をつけるのは無理なのだ。
  • 悩ましいことに、4月に、短歌の賞の選考会がある。実は会当日にはどうしてもはずせない大学の仕事があり、書面での参加になりそうだ。

    候補作品がどれも優れていることはよく知っている。作者へのリスペクトをもって選びたい。

    (坂井)

    2013年3月24日 (日)

    2011年アカデミー作品賞(ひとりごと)

    映画は全くの素人だし、これは2011年のアカデミー賞の話だ。2012年の洋画は、まだほとんど見ていない。映画はだいたいが飛行機の中かレンタルビデオで、本気で映画館通いをする時間がない。まったくしかたないことだ。

    この年のアカデミー作品賞候補のうち、「ミッドナイト・イン・パリ」ヒューゴの不思議な発明「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の3作品を見た。「ミッドナイト」はNHKの収録前夜にホテルのすぐそばの文化村ル・シネマで。「ヒューゴ」はいつどこでか忘れたが、たぶんレンタルビデオか飛行機の中で。「ものすごくうるさくて」は、昨日、結婚27周年記念に米川といっしょに。

    結婚記念日に「夫が死ぬ」映画を見る。私たち夫婦はちょっと変わっているかもしれないが、以前からこういうのが不思議にしっくりとくる。美男美女のハッピーエンド物語は、私たちには合わない。

    ともかくこの3作品、どれも文句なく、すばらしかった。

    これらを負かして作品賞を受賞した「アーティスト」を、どこかで時間を作って見ることにしたい。DVDを借りて、出張の新幹線の中で見るなどだろうか。

    しかし。「アーティスト」がどんなにすばらしくても、上の3作品の価値が相対的に低下するようなことは無いと思う。

    (坂井)

    2012年12月23日 (日)

    おおかみこども

    北京から帰る飛行機の中で、細田守の『おおかみこどもの雨と雪』を見た。『時をかける少女』も『サマーウォーズ』も見たが、今度のもなかなかよかった。

    人間として生きる子とおおかみとして生きる子。この私は、前者としてどうにか生きのびている。そんなことも感じた。いやいや。人間社会で生き、若く死んだ彼らの父親に近いのかもしれない。

    そういえば、歌人という人種は、実のところ、ニホンオオカミのようなものかもしれない。ふつうに人間といっしょに暮らしていても、とがった耳や鋭い牙を隠し続けなければならない。ライオンや虎とちがって、この湿潤な温帯の野山でひそかに命をつないできたが、もはや絶滅した化石と言われることがある。

    (坂井)