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2012年3月 3日 (土)

秀歌鑑賞:切る歌

家族幻想・国家幻想切り刻むアスパラガスのこゑぞかなしき   

                              水原紫苑(「短歌研究」2012年3月号)

第三句で句切れになっている歌。作者がもともともっていた思いに加えて、震災以後、家族や国民の絆が叫ばれていることへの抵抗感もあるのだろう。「切り刻む」という言葉がいかにも痛烈だが、水原さんは「切り刻」まれているアスパラガスの悲鳴をたしかに聞き、悲しんでもいるのだ。作品7首に付されているエッセイでは、杉﨑恒夫さんの歌が引かれている。

簡潔なるあしたの図形 食パンに前方後円墳の切り口     杉﨑恒夫『食卓の音楽』

水原さんは杉﨑さんについて「世界の秘密を、そっとやさしく伝えてくれる」「決しておのれの情念をそこにこめて、私たちをおそれさせたりはしないのだ。」という。私は生前の杉﨑さんを存じ上げないが、二冊の歌集は優しくユーモラスですばらしく上品だと思った。

水原さんと杉﨑さんの切る歌、どちらも好きだ。

(米川千嘉子)

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